古本屋の始めかた:神奈川古書組合より

                川崎支部 ブックサーカス
元住吉の店を自分でやり始めてから1年が過ぎ、思っていたより
さらに店は売れないものだなーと実感する日々を送っています。
私、元々とある古書店でアルバイトとして入り、それからそちらの
社員となり、その後独立し今に行き着くわけですが、アルバイトの
頃の自分はあまりに酷く、周りの先輩たちにかなりの迷惑をかけて
いました。(レジが覚えられない、接客の声が出ない、お客様が
来られると、裏に隠れてしまう等々かなり病んでいました。)
今の自分の店にその時の私が来たら即、首ですが、当時の店主は
何故か引き続いて雇って頂き、、社員にしてもらいました。
社員になりしばらくして。初めて金曜日の市場に行った時は、
振り手の方が<鬼のフドウ>そのもので、恐ろしいところに来て
しまった!との思いは、いまだに忘れられません。
(今の金曜日はそんなことはなく、その時も私が小心な為の幻影と
思われます。)
それでも市場に通い続けるうちに、次第に面白さを見出せるよう
にはなっていきましたが、定期的に市場で品物を売買し、それを
商売として回転させていくのはなかなか難しいなぁと思い、
店主に相談すると、<じゃあ、どうしたらうまく回る?>と
返されました。
わたしがそのまま黙ってしまうと、いくつかのヒントのようなものを
くれましたが、それ以上は自分で考えて。で終わりました。
以後も何か相談、質問をすると、<じゃあ、どうしたら?>
<本当にそれが正しいの?>と常に返されたため、最初はげんなり
しましたが、相談する前にその二つを考えながら話すようになりました。
ただ、私自身が基本的にネガティブなので、延々<じゃあ、どうしたら?>
<本当にそれが正しいの?>のループにはまり、私が黙って終了という
ことが多かったと記憶しています。
それでも割合自由にさせてもらったおかげで、試行錯誤を繰り返す
ことができ<じゃあ、こうしたら>とやってみて、結果を体験させて
もらったのは、良い経験であるとともに、この仕事を続けようという
小さな覚悟のようなものができたのが一番の収穫でした。
まあしかし、翻ると店の現状は厳しく、試行錯誤するのにもお金が
かかるしなぁと思っていると<じゃあ、お金がかからない方法は?>
<すべてやりつくしたの?>との声が聞こえてくるので、もうほんの
少しだけ、力を尽くそうかと思います。
                                                                川崎支部 ブックサーカス

                  川崎支部 有限会社 十字社 近代書房

まったく! 入ってくる本を値付けしていると、毎日毎日初めて見る本がある。
もう40年も続けて来ているのに、これはいったいどうした事か?
ナゼ? ナゼこれほど長くこの商売を続けているのに見た事の無い本が毎日
あるのだ ろうか。
考えてみれば、正解は「毎日、新しい本が出ているから」という事なのだろう。
朝刊には日々新刊広告が載っているし、たまに新刊屋さんを覗いてみれば、
なるほど見た事の無い本だらけだ。
この数十年に出版された本に関していえば、大きな新刊書店にその間勤め
られていた書店員さんやその店に長年通い続けたお客さんの知識には
とうていかなわなかったりする。
しかしながら私たちの組合に所属して毎週神奈川や東京の古書市場に
出入りする古書店業者は毎回出品される数千冊の古書を見ているし、
その古書は売れるだろうと選ばれて出品された古書が大半だ。
(新刊書店に並ぶ書籍の何割が古書として売れるのだろう、また星の数程
出版された書籍のどれほどが)
ただ未見の本で驚くのはひどくつまらない本か、良い本だ。
うわっ、こんな本が出ていたんだという良書との出会いが多くの古本屋の
喜びのひとつだと思う。
しかも我々の出会う古書の時間軸は自分の生前、戦前、江戸時代、
さらにそれ以前に伸びているし、洋書や中国書等というように横軸もあり
古今東西のものが扱える。
そんな魅力がこの業界に参入を希望するひとたちが後を絶たない理由
なのかも知れない。
古書を楽しむお客さんに知っていただきたいのは、ネット専門の店も含み、
それぞれの町の古本屋にいつどんな本が入荷するのかが分からないことです。
我々の仕入れ先は店買い、宅買い、古書市場からの仕入れが主ですが、
どこの町にも読書家、蔵書家がいらしていつその蔵書を手離すのかわからないし
一店が神奈川県の全部の町の買い取りを隈なくすることはできません。
どの店にもそれぞれスタイルがあるので陳列された本やネット目録やホームページで
それを分析したり、店主に定期的に市場からの入荷があるのか、扱い分野など
訊ねてみるのもいいのでは。また当店では原則しないのですが、探究書の予約が
できるかどうか等、まずはよく行ける近隣の店からあたっていただけたらと願います。
電子書籍などの媒体が増えて、大きく分けてこれからは紙の本と電子書籍の
二通り(その併用も含め)となりますが、戦前、戦後蓄積された膨大な古書を頼りに、
やはり本がいいというお客さんを相手にさらに商売を続けられたらと思います。
この商売を続けていると生涯に1度は大きな取引があると言われています。
落語でいうと「芝浜」は少し違うけど、「火焔太鼓」のような事が起きたりもします。

―初夢や 火焔太鼓の 大商いー  「火焔太鼓」は志ん生で聴いてください。

             川崎支部有限会社 十字社 近代書房  山本豊彦

                          湘南支部 あさひ書店
今年、インターネットでオンラインショッピングを始めて20年目になる。
Windows 98が出現してからしばらく経ち、爆発的にネット通販が広がった時代で
あるので、当店に限らずこの時期前後にネット通販を開始したご同業も多いと思う。
今回、当時お世話になった方々に感謝しつつゆかりのあるホームページの
20年前の姿を再び覗いてみたいと思い、ウェブアーカイブ閲覧サイトで有名な
Internet Archive Wayback Machineを利用してみることにした。
最初は、ほぼ同時期に神奈川古書組合に入ったH書房。
この店の存在がなければネット通販を始めるのはずっと後だっただろうし、
自分の商売の在り方も大きく変わっていたであろう。
ここは、日本で最も早くインターネットに着目して、ホームページを持ったお店の
ひとつである。
当時、パソコンの知識が皆無であった私は、足繁くお店に通って教えを請い、
商売の邪魔をしたものである。
た、古書サーチエンジンのショッピングモールにも紹介していただいて、
店売りのみに限界を感じていた当店の、初期の商売の柱を作っていただいた。
店主の趣味で草花と天文写真が掲載されていた馴染みのあった表紙は、
中期以降のご本人自作オリジナルデザインであるが、その他エクセルを使った
新着情報もまめに更新して、よく検索エンジン上位で見かけたものである。
すっかり忘れていたが、ホームページでは絶版書専門店の看板を掲げて
商売していた。
交換会で山ほど仕入れた古書を丁寧に手入れしてジャンルにこだわらずネットに
登録する、一見当たり前の作業の大切さを身をもって教えていただいた、
閉店して久しいが忘れられない店である。
次は、組合の催事でもよくご一緒させていただいたR書店。
当店はこの店のホームページを徹底的に模倣した。斬新な切り口の企画、
強力で素早い在庫検索機能、当時は数少なかったショッピングカート採用、
どれをとっても20年前のレベルとしては破格で、現在の日本の古本屋の原点の
ようなサイトであった。
独自のドメインを持って、CGIを使いたいと思っていた当時、勝手にソースコードを
分析させていただき、使用しているプログラムと同じものを入手し、何とか目標に
近づこうと試行錯誤していたのが懐かしい思い出だ
コミック、写真集はじめジャンルは多岐にわたったが、当時のリストを改めて見ると、
今ならお宝本の山である。
惜しくも、R書店はオンラインショップをやめてしまい、今ではアーカイブでしか
見ることができなくなってしまった。
結局、当店の完成系は足元にも及ばなかったが、その名残である検索機能
現在も自店ホームページ上で働いている。
最後は今も現役のB堂。ここは、リンク・リストをよく利用させていただいた。
個性的で魅力的なオンライン古本屋が多く集まり、定期的にチェックするのが
楽しみであった。
Twitterが誕生するずっと前に日記・コラムという形で自ら発信し独自の
ブランドイメージを作るのが上手く、古書組合にもショッピングモールにも属さない、
店舗も持たないオンライン古本屋という新ジャンルを築いていった方々だが、
今回久しぶりにB堂のホームページを覗いてみたら、あの懐かしかった多くの店々が、
もう無くなってしまっていた。
今はamazonや日本の古本屋などのプラットフォームを使用して、自店ホームページを
持たないネット通販が主流であり、時代の流れとは言え淋しい限りである。
全盛期から比較するとずいぶん独自のホームページを持つ店は減ってしまった。
その後B堂は組合に入り、交換会を利用し、催事を始め商売の幅を広げ、
オンライン古本屋一辺倒からの変化を選択し現在に至る。
のおかげで、当時の面影を今なお残すB堂のホームページを今日も見ることが
できるのは私にとって大変懐かしく、ありがたいことである。
                         湘南支部 あさひ書店

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